神の光
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
一攫千金を夢見て忍び込んだ砂漠の街にある高レートカジノで、見事大金を得たジョージ。誰にも見咎められずにカジノを抜け出し、盗んだバイクで逃げだす。途中、バイクの調子が悪くなり、調整するために寄った小屋で休むが、翌朝外へ出ると、カジノがあった砂漠の街は一夜のうちに跡形もなく消えていた──第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に選ばれた表題作を始め、奇跡の如き消失劇を5編収録。稀代のトリックメーカー・北山猛邦の新たな代表作となる、傑作推理短編集。/【目次】一九四一年のモーゼル/神の光/未完成月光 Unfinished moonshine/藤色の鶴/シンクロニシティ・セレナーデ
APPLE BOOKSのレビュー
一夜にして家が消える「消失トリック」の絶対的名作であるエラリー・クイーンの中編『神の灯』にオマージュをささげ、収録された5編すべてを「消失」テーマでそろえた北山猛邦による驚異のミステリー短編集。第2次世界大戦下のレニングラードで、狙撃手がスコープ越しにのぞいていた館が一晩で消える「一九四一年のモーゼル」、砂漠の中にあるカジノの街が丸ごと消え失せる表題作「神の光」、エドガー・アラン・ポーの未発表原稿に記された山小屋の消失の謎を解く「未完成月光 Unfinished moonshine」、時代の異なる三つの消失劇が千年の時を超えて一点に収束する「藤色の鶴」、夢の中で霧に包まれて消えた館とそっくりの館が同様に消えてしまう「シンクロニシティ・セレナーデ」。「物理の北山」の異名を持つ作者だけあって、多種多様な状況の謎を解き明かすのは壮大な物理トリックだが、これは単なる推理パズルではない。ロジックと幻想が両立し、物語には余韻があり、昨日までの現実の崩壊を目の当たりにした登場人物たちの感情が静かに漂う。物語の中の建物は消失するが、緻密に設計され職人的な技術で丁寧に組み立てられた小説という建築物が立ち上がる、見事な作品集。