#台所のあるところ
-
- ¥1,900
-
- ¥1,900
発行者による作品情報
6つの台所をめぐる「わたし」の物語。
『三千円の使いかた』の著者が贈る、
ちょっぴりほろ苦く、じんわり心に沁みこむ「暮らし」をめぐる物語。
◇◇◇
2人の子供が巣立ち、定年を迎えた夫は長年望んでいた仕事のため海外へ。広い家にひとり残された主婦は、15年前、越してきた日に購入を諦めたステンレス製の両開き大型冷蔵庫を迎え入れるべく、家電量販店を目指す。今度こそ、自分が本当に欲しい冷蔵庫を手に入れるため……。(ままならないキッチン、ままならない人生)
昔から「内藤」と「鈴木」姓の人間しか住まず、たがいに反目し合い、口すら利かない風習の島に嫁いだ女性を待ち受けていた運命は?(冷凍庫冷蔵庫合わせて五台)
食べ盛りで生意気な4人の子供を育てるシングルマザーの台所には、常に油をなみなみ張った中華鍋が鎮座している。(毎日、揚げ物)
……世代も境遇もバラバラの5人の女性たちの前には、30分の深夜ドラマ「台所のあるところ」があった。
APPLE BOOKSのレビュー
第175回直木賞候補作。代表作の『三千円の使いかた』をはじめ、日々の暮らしに寄り添う作品で知られる原田ひ香が、人生の喜怒哀楽が詰まった「台所」を舞台に描く連作短編集。世代も境遇も異なる5人の女性たちをつなぐのは、深夜に放送される30分のドラマ『台所のあるところ』。夫の赴任を機に念願の大型冷蔵庫を買う主婦、タイムパフォーマンス(タイパ)重視の彼との同居で一口コンロに悩む会社員、因習の島に嫁ぎ、5台の冷蔵庫に囲まれて暮らす妻らが、ドラマをきっかけとしたSNSの交流を通して少しずつ変化していく姿を描く。「台所」という生活の基盤が、登場人物の人生そのものを雄弁に語る装置になっている。彼女たちが無意識に抑えてきた本来の自分や、不器用にも日々を愛おしむ姿が次々に投影されていくさまに、思わず自分の生活を重ね合わせずにはいられない。日々の料理や他者とのささやかなつながりが、現状を打破する小さなきっかけになる過程を丁寧にすくい上げる筆致は、原田の真骨頂だろう。各話の主人公は、これまで他者との関係で常に自分を後回しにしてきた女性たちだ。本作はそんな彼女たちが手放した過去を肯定し、再び自分の人生のかじを取ろうとする、自己回復の物語である。