



くもをさがす
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4.0 • 86件の評価
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- ¥1,500
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- ¥1,500
発行者による作品情報
カナダでがんになった。
あなたに、これを読んでほしいと思った。
これは、たったひとりの「あなた」への物語ーー
祈りと決意に満ちた、西加奈子初のノンフィクション
『くもをさがす』は、2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から寛解までの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。
カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。
切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。
● 『くもをさがす』へ寄せられた声
思い通りにならないことと、幸せでいることは同時に成り立つと改めて教わったよう。
――ジェーン・スーさん(コラムニスト)
読みながらずっと泣きそうで、でも一滴も泣かなかった。そこにはあまりにもまっすぐな精神と肉体と視線があって、私はその神々しさにただ圧倒され続けていた。
西さんの生きる世界に生きているだけで、彼女と出会う前から、私はずっと救われていたに違いない。
――金原ひとみさん(作家)
剥き出しなのにつややかで、奪われているわけじゃなくて与えられているものを知らせてくれて、眩しかったです。関西弁のカナダ人たちも最高でした。
――ヒコロヒーさん(お笑い芸人)
読み終わり、静かに本を閉じても心がわさわさと迷う。
がんの闘病記という枠にはとてもおさまらず、目指す先はまったく別にあることに気づかされた一冊。幸せいっぱいのときに、それを失う恐怖心が同時に存在するパラドックスに気づくと、上手くいったとしてもイマイチでも、自分なりに納得できる瞬間の積み重ねが人生なのだとあらためて知る。
――高尾美穂さん(産婦人科医)
APPLE BOOKSのレビュー
家族と共に語学留学中だったカナダで、乳がんを発症した作者の“嵐のような日々”を記録したエッセイ。コロナ禍のただ中にある異国で高度医療を受けることには、想像以上の困難がつきまとう。それでも彼女はカナダでの治療を選んだ。そして言葉の壁や医療制度の違いなど、さまざまな壁にぶち当たりながらも自らの命と果敢に向き合っていく。西加奈子にとって初のノンフィクションとなる本作は、いわば闘病記だ。しかし、本作は“闘病記”という言葉から想起される悲壮でストイックな筆運びに終始するものではない。ここには不安に苛(さいな)まれながらも忘れないユーモアがある。痛みや苦しみをさらけ出す、逆説的な強さがある。自分の中に巣食う病魔を俯瞰(ふかん)する、作家らしい視点がある。関西弁で訳されるカナダの医療者たちとのぶっきらぼうで温かい会話も、生と死のはざまでふっと気持ちを軽くさせてくれる。彼らの一人が「あなたの体のボスは、あなたやねんから」と西に語りかけるシーンが忘れられない。完璧でなくても、自分で決めて自分を全うすること。その言葉はそれでも生きることを選んだ、すべての人にとってのエールとなるはずだ。
カスタマーレビュー
“私は女性で、そして最高だ”
読書感想文。西加奈子さん”くもをさがす”
西加奈子さんの新刊の小説だ。と思って買ってみた。読み進める。違った。西加奈子さん本人の乳がんの告知から、手術、そして今にいたるノンフィクションでした。
死や病気を扱った小説はあふれている。一律には扱えないが、やや、商業主義的な盛り方に冷めるときがある。(とはいえ、なんだかんだいつも考えさせられる。とはいえるが)
一方、ノンフィクション。言葉の選び方がとても好きな西さんが書いたもの。小説ほどの言葉のリズムのなさ、不揃いな文脈と構成、展開がよい。
読後、そのリアルでほんものの空気の伝わる文章に、心身への痛み、喜び、笑いを共有させてもらった思い。そして、また、自分におきかえる。生き方、死に方、暮らし方、”普段考えないけど時々考える”あの宇宙にも似た沈思の海にゆっくり入る。
ひびいた言葉がある——
私の体のボスは私
西加奈子とニシカナコ
鈍い孤独
無けなしの命
“あなた”に向けて書いている
—— “私は女性で、そして最高だ”
そして、最終章“6.息をしている”で、筆致が勢いを増します。この章に乳がんを経験した人間”西加奈子”さんの思いがあふれだしているように感じた。泣けてしまう人間のはかなさと素晴らしさ。