舞台
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3.6 • 7件の評価
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発行者による作品情報
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――。
太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまでも平然と振る舞おうとしたことで、旅は一日4ドルの極限生活に--。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編!
カスタマーレビュー
演じるのことの”しゃらくささ”と”優しさ”と
読了2023/5/21感想5/21
初めて読んだ西作品。いろいろ衝撃と共感をもってかけぬけた。大作”サラバ”の814ページと比較しても191ページと入りやすい。
主人公は、作家の亡き父をもつ29歳の葉太。ある目的をはたすために人生初の一人旅、旅先はニューヨーク。
葉太のなかの、自意識、虚栄心、羞恥心の心の動きが面白い。旅行の一幕であることも、自分の旅中の心理とも重なり、くすくすしてしまう。
小説に内包しているテーマは、対人関係のなかで自分を演じることの是非。”あざとさ”か”しゃらくさ”か”優しさ”か。ここは読み進みながら、自分を置き換えて考える時間が多かった。
特に”〇〇すぎる”という表現。自分の心の隅にあったこそばゆい感覚をくすぐられた感じ。
“ニューヨーク”すぎる
“タイムズスクエア”すぎる
“タイムズスクエアにいる自分”すぎる
“初秋のセントラルパークでサックスを吹く初老の老人”すぎる
“地球の歩き方 ニューヨーク”すぎる
“父を恋しがって、泣いている男”すぎる
後半のスピード感と、さらっと葉太の特殊能力が違和感なく設定されている。すごい。