クジラアタマの王様(新潮文庫)
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4.3 • 26件の評価
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- ¥850
発行者による作品情報
記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている?――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(解説・川原礫)
APPLE BOOKSのレビュー
伏線回収の巧みさで多くの読者を魅了するベストセラー作家・伊坂幸太郎が、小説内に川口澄子の挿絵(コミックパート)を挟み込むという、新たな表現方法に挑戦した冒険活劇「クジラアタマの王様」。製菓会社で宣伝広報局に勤務する岸は、新商品の異物混入事件のクレーム対応で忙殺されていた。ある日、クレームを付けていた主婦の夫として知り合った都議会議員の池ノ内から、「この鳥に見覚えはありませんか?」というメッセージと共にハシビロコウの画像が添付された謎のメールが届く。不信感を覚えながらも何か引っかかるものを感じた岸は池ノ内と会うが、彼が語りだしたのは「夢」の話だった。夢で一緒にモンスターと戦ったというもう一人の登場人物である人気アイドルのヒジリ、そして3人に共通する火事体験。やがて池ノ内は、夢の世界での戦いの結果が現実世界とリンクしているという奇妙な説を唱えだす。どこにでもいそうなサラリーマンが夢の中の世界では戦士になるが、現実に戻るとその世界の出来事をほとんど覚えていないという設定もさることながら、徐々に夢の世界に囚われていく主人公たちの姿にハラハラさせられる。