ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学
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3.9 • 14件の評価
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発行者による作品情報
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。
APPLE BOOKSのレビュー
ナマコなどの棘皮(きょくひ)動物の大家であり、歌う生物学者としてテレビでも取り上げられた東京工業大学名誉教授の本川達雄が、1992年に発表したサイエンスのベストセラー。哺乳類は一生の間に心臓が約20億回鼓動し、約5億回呼吸するとのデータから、体のサイズによって時間の流れ方が変わる“生理的時間”という衝撃的な概念を紹介し、その視点を通して生物と人間について考えさせる。紹介する生物は植物やバクテリアからゾウやクジラまで大小さまざま。寿命や食事、移動速度といった身近な話題から、骨格構造や呼吸器と循環器の発達についてなど、サイズで変化する進化の過程と大きくなれない限界を物理学や流体力学も交えて解説する。生物の勉強では大量の知識を記憶することが多いが、サイズと生物の関連性を知れば進化の歴史は「なるほど」の連続。バラバラだった知識が生理的時間でつながり、世界観がガラリと変わるだろう。それは自分の体についても同じこと。人間のサイズに合った時間は、現代の生活に合っているのかと思索したくなる。現代文明論にまで踏み込んだ、生物学の楽しい入門書。