八月の路上に捨てる
-
- ¥510
-
- ¥510
発行者による作品情報
30歳の誕生日に、妻と離婚する予定の敦。暑いさなか、自動販売機に飲料缶を補充する仕事に回る車内で、同僚のシングルマザー・水城さんに、敦は結婚生活の顛末を尋ねられるまま語りはじめる…。ほんの僅かずつ掛け違っていく夫婦を描いた、第135回芥川賞受賞の表題作。ほか、働く男女の暮らしを淡々と描き出す「貝からみる風景」、妊娠中の娘が実家に戻ってきたのを機に煙草との離脱を決意した男の進行形禁煙小説「安定期つれづれ」を収録。
APPLE BOOKSのレビュー
第135回(2006年上半期)芥川賞受賞作。ジュブナイル小説『ぎぶそん』『ミカ!』で高い評価を受けた伊藤たかみ。133回芥川賞から3回連続で候補に挙がり、三度目の正直で『八月の路上に捨てる』で受賞した。淡々とした文体でサラサラと読める短編で、就職氷河期に直面した若者たちが令和になっても冷遇されている社会問題と重なり、時を経てなお読者に刺さりそうだ。脚本家志望の敦は創作活動をしながら、歌舞伎町周辺で自動販売機のルートサービスのバイトをしている。コンビを組むドライバーの水城は、シングルマザーということもあり、敦の離婚のいきさつを聞いてくれた。妻の知恵子は大学時代からの付き合いで、就職活動の失敗から立ち直り、夢だった編集者になった。それぞれが仕事と夢の実現に追われるうちに経済格差は広がり、夫婦のパワーバランスがぐらついた。敦がこぼす後悔のような告白を、水城は受けたり流したり諭したり。エネルギッシュに生きる水城と、ぶざまに生きる敦との対比に苦笑する。受賞翌日から書き始めたという、温和な夫婦の物語『貝からみる風景』と、他1編を収録。
カスタマーレビュー
ラキシル
、
普通で良い。
日本人のごく普通の生活感。