同志少女よ、敵を撃て
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4.5 • 71件の評価
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- ¥1,200
発行者による作品情報
激化する独ソ戦のさなか、赤軍の女性狙撃兵セラフィマが目にした真の敵とは──デビュー作で本屋大賞受賞のベストセラーを文庫化
APPLE BOOKSのレビュー
第二次世界大戦での独ソ戦を舞台に、狙撃兵となった女性兵士の凄惨(せいさん)な戦いを描いた逢坂冬馬のデビュー長編。モスクワ近郊の農村イワノフスカヤで暮らす少女セラフィマの人生は一変した。村がドイツ兵に襲われ、村人は全員惨殺されたのだ。赤軍の女性兵士イリーナに命を救われたセラフィマは、「戦いたいのか? 死にたいのか?」と問われ、女性狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナへの復讐(ふくしゅう)のために。女性だけの狙撃兵訓練学校で出会い、狙撃手部隊の一員として共に成長していくシスターフッドを描いた小説としても秀逸であり、スターリングラード攻防戦やケーニヒスベルク包囲戦など、激戦地での戦闘を臨場感たっぷりに描く冒険小説としても第一級。実在の女性狙撃手リュドミラ・パヴリチェンコや最高指導者フルシチョフを登場させるなど、虚実を混ぜた構成も見事。その上で狙撃兵の心理に迫り、何のために戦うのか、本当の敵とは誰なのかが問われ、戦争が女性にもたらすものが明らかになる。ソ連で従軍した女性たちの証言集であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』をフィクションの形で再構築したかのような、文句なしの傑作。