



岳物語
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3.2 • 9件の評価
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- ¥440
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発行者による作品情報
山登りの好きな両親が山岳の岳から名付けた、シーナ家の長男・岳少年。坊主頭でプロレス技もスルドクきまり、ケンカはめっぽう強い。自分の小遣いで道具を揃え、身もココロもすっかり釣りに奪われてる元気な小学生。旅から帰って出会う息子の成長に目をみはり、悲喜こもごもの思いでそれをみつめる「おとう」…。これはショーネンがまだチチを見棄てていない頃の美しい親子の物語。
APPLE BOOKSのレビュー
長男、岳を主人公に、保育園から小学校5年生までの息子の成長を描いた椎名誠の私小説『岳物語』。高学年以降を描いた続編『続・岳物語』と合わせて著者の人気作として名高い。近所に住む岳の保育園の友達とそのお母さんにまつわる「きんもくせい」、岳に届いた3つのバレンタインチョコと彼の手紙についての「タンポポ」、親子の三宅島への釣り旅を記した「ムロアジ大作戦」、北海道の旅から帰ってきた息子の姿を通して自らの父親の記憶を回想する「三十年」、長期の旅の合間に息子へ2日間の旅をプレゼントする「二日間のプレゼント」など、9編のエピソードがつづられている。父親である著者の目を通して描く息子との日々は、温かくもたくましく、長い旅で家を空けながらも、ちょうどいい距離感で真っすぐに子どもと向き合う姿がほほ笑ましい。長期の仕事の旅から帰ってくるたびに、少しずつ父親を出迎える息子の様子が変わっていく描写は、親ならばいつか来る子離れに寂しさを覚えてしまうかもしれない。しかし、その時まで目いっぱい子どもと向き合おうと思える一冊。学生の課題図書にもなっている本書だが、思春期に読むのと大人になってから読むのとでは全く違う感想を持つだろう。