



日御子(上)
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4.3 • 3件の評価
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- ¥770
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発行者による作品情報
代々、使譯(通訳)を務める<あずみ>一族の子・針は、祖父から、那国が漢に使者を遣わして「金印」を授かったときの話を聞く。超大国・漢の物語に圧倒される一方、金印に「那」ではなく「奴」という字を当てられたことへの無念が胸を衝く。それから十数年後、今度は針が、伊都国の使譯として、漢の都へ出発する。
APPLE BOOKSのレビュー
現役医師でありながら作家としても活動する帚木蓬生の歴史小説『日御子』。あまりスポットを当てられてこなかった、謎に包まれた弥生時代を物語の舞台に選んだ。学術的にも中国の史書に頼るしかない日本の1~3世紀。漢倭奴国王印の授受にはじまり、『三国志』の「魏志倭人伝」まで、断片的にしか登場しない日本を、使譯(通訳)という特殊技能を持った一族の目を通して一本の線でつなぐ。歴史的には邪馬台国の卑弥呼として知られる太古の女王を「弥摩大国の日御子」としているが、そもそも漢字が渡来する以前の時代のことで、決して荒唐無稽とはいえない整合性と説得力がある。代替わりしていく主人公は、国内もまとまっていない中、海を渡り、大陸という国際舞台で奮闘。時代を見つめる語り口は淡々としているが、それぞれのキャラクターは魅力的で、一貫して一族の誇りを守る点に絆を感じる。