特命 前篇 殺し蝶
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発行者による作品情報
突然、寄場詰同心の役を解かれた南町奉行所の帰山貴三郎。小りんという謎の女に連れて行かれたのは、南町奉行の根岸鎮衛配下の与力の元だった。犯科の増大を憂えた奉行は、隠密裡にこれを探索し撲滅せよとの「特命」をくだす。帰山は元門前廻り同心の深草新吾とともに抜擢されたのだ。ある老婆の死に不審を感じて調べると、慎ましい暮らしなのに、どこかに毎月一両もの大金を送金していた。渾身の時代活劇。
APPLE BOOKSのレビュー
2人の特命同心が難事件を解決していくハードボイルドな時代劇。江戸後期、犯罪の急増に頭を悩ませた江戸南町奉行は、同心の帰山貴三郎と深草新吾を、秘密裏に探索を行う特命同心に任じる。貴三郎は新陰流、新吾は念流の使い手で一騎当千。そんなバディを支えるのが元岡っ引きの娘で事情通の小りんと、元はとび職だが裏社会に通じる丑松。このチームが次々と巻き起こる事件に挑んでいくが、やがてそれぞれの事件の背後に「殺し蝶」と呼ばれる女刺客の存在が浮かび上がる。そして貴三郎、新吾、小りんの3人ともに、殺し蝶との浅からぬ因縁が明らかになり後篇へと続く。『必殺仕事人』から『西部警察』まで、数々の人気ドラマで脚本を担当してきた著者らしいテンポの良さと、詳細な江戸の町の描写が臨場感を盛り上げる。ドラマのように1話ずつ完結しながら、徐々に真の敵が浮かび上がっていく展開が見事。また、それぞれのエピソードも現代の社会問題に通じるものがあり共感しやすい。読後はすぐに後篇へ進むべき。