秋
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4.1 • 112件の評価
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発行者による作品情報
この作品を書いている、芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ、1892年(明治25年)3月1日-1927年(昭和2年)7月24日)は、日本の小説家。この作品は底本の「現代日本文学大系43芥川龍之介集」では「小説・物語」としてまとめられている。初出は「中央公論」1920(大正9)年4月。
APPLE BOOKSのレビュー
近代を代表する文豪の一人、芥川龍之介による短編小説。いとこを巡る姉と妹の三角関係を軸に、女性2人の微妙な心の揺れを丁寧に描く。芸術至上主義の立場を取り、古典や歴史を題材にしてきた芥川が、大正9年(1920年)に初めて試みた近代心理小説である。信子は学生時代から才媛と呼ばれ、将来は作家として活躍すると周囲から期待されていた。また、同じく文学を志すいとこの俊吉と特別な仲にあり、2人は一緒になると誰もが疑わなかった。ところが、信子は大学を卒業すると商社に勤める青年と突然結婚し、大阪へ行ってしまう。実は妹の照子が俊吉に思いを寄せていることを知り、自ら身を引いたのだった。やがて照子は俊吉と結婚し、ある時、信子は妹夫婦の新居を訪ねる…。仲の良い姉妹の間にかすかに生まれる嫉妬や羨望(せんぼう)。男女の三角関係という通俗的なモチーフながら、大正時代に生きる女性の心の機微を叙情的に描き、切ない読後感を残す小編だ。その一抹の寂しさは『秋』というタイトルに象徴されている。芥川には珍しいタイプの作品といえるが、新たな境地に踏み出した意欲作として一読の価値があるだろう。