美しき愚かものたちのタブロー
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4.7 • 26件の評価
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発行者による作品情報
アートに青春と情熱をかけた男たちの物語
「日本に美術館を創りたい」。その夢を追いかけ、絵を一心に買い集めた男がいた。国立西洋美術館の礎“松方コレクション”誕生秘話。
※この電子書籍は2019年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
それがなくても生きていける。けれど、それがあれば生きる力がもたらされる。そんなタブロー(絵画)の魅力に取りつかれ、情熱を注いだ男たち。東京、上野の国立西洋美術館の誕生秘話を、史実に基づいて描いた感動作。日本に美術館を創設し、世界に通用する若者を育てたい。日本有数の造船所の社長、松方幸次郎は、その思いに駆られ、戦前のヨーロッパで数千点もの作品を収集する。だが、世界恐慌が起こり、戦争が始まると松方の夢は道半ばで途絶えてしまう。そして戦後。かつてパリで松方の作品選びに奔走した西洋美術史家、田代雄一は、フランス政府に接収された“松方コレクション”返還の交渉に当たるが、戦時下でコレクションを守り抜いたのは、松方の部下で元飛行士の日置釭三郎(ひおきこうざぶろう)だった…。日仏間の返還交渉が始まる戦後と、松方と田代が胸を躍らせながら数々の名作に出会う戦前、そしてナチスとの緊張に震える戦時下。時系列に縛られず、自在に行き来する作者の筆致もまた、美しいタブローを描くようにマジカル。芸術の素養がなくても、モネやゴッホの傑作に感化され、人生が変わっていく松方や日置。“愚かものたち”の信念と熱い思いが胸を打つ傑作。