虚の伽藍
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4.6 • 7件の評価
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- ¥2,200
発行者による作品情報
日本仏教の最大宗派・燈念寺派で弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄。バブル期の京都を支配していたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのは――。圧巻の社会派巨編。
APPLE BOOKSのレビュー
バブル期の京都を舞台に、仏教に関わる人々の間で渦巻く果てしない欲望を描いたピカレスクロマン。主人公は、伝統仏教の最大宗派である燈念寺派に仕える若き僧侶、志方凌玄。とある寺の所有地売却をきっかけに、燈念寺派による組織ぐるみの不正に気付いた凌玄は、京都の裏社会で暗躍する謎の男、和久良桟人と手を組むことに。腐敗しきった燈念寺派を正道に戻すために自身が権力を得る必要があると感じた凌玄は、志を同じくする親友の海照と共に、あえて修羅の道に身を投じることを決心する…。ハードボイルドやSFなど、ジャンルを超えて優れたエンターテインメント作品を生み出す月村了衛が手掛けた本作は、第172回直木賞候補作にも選出された骨太な社会派小説。巨大な仏教組織で私欲をむさぼる幹部たちに加え、他人の欲望に付け込むヤクザや政治家を巻き込んだ先の読めない物語がスリリングに展開し、読者を一気に引き込んでいく。人間の本質とは、宗教が持つ意味とは、本当の幸せとは何か。そんな、生きる上での重要な命題に問いを投げかける作品だ。