関東大震災
-
- ¥730
-
- ¥730
発行者による作品情報
大正12年9月1日午前11時58分、大激震が関東地方を襲った。直後に大規模火災が発生、首都圏一帯は一瞬にして地獄となった。絶叫し、逃げまどう人々──飛び交う流言が、自警団による陰惨な朝鮮人虐殺という悲劇をも引き起こす。本書は、地震予知を巡る抗争にはじまり、被害状況、死体処理、被災者のバラック街の様子から糞尿の処理にいたるまで、未曾有の大震災の真実を掘り起こす。20万の命を奪った“天災”と“人災”を浮き彫りにする、菊地寛賞受賞の名作。
APPLE BOOKSのレビュー
史実を基に入念な取材を重ねて作品に仕上げる記録文学の雄、吉村昭の「関東大震災」。1923年(大正12年)9月に関東地方で発生した大地震と、これに由来する大規模火災により多くの犠牲者が出た様子などを、多数の資料に当たり、丹念につづった力作。被害状況を数値で記すだけでなく、子供から大人まで多くの被災者の体験記録などを踏まえて、臨場感たっぷりに描くことで、災害の深刻さを如実に伝えた秀作。中でも地震発生後に多くの人が避難した工場跡地で発生した火災の描写はすさまじく、生き残った人の生々しい体験談とともに胸に迫る。地震予知に関してどのように世間に知らしめるかで対立する研究者の姿、災害後に流言飛語が飛び交い外国人に対する迫害が起こっていく過程や多発する犯罪など、関東大震災を中心とした世情を信念に満ちた力強い筆致で書き、読み手を引き込む。震災被害の甚大さだけでなく、非常事態による不安や疑念が人々を惑わせる怖さにも言及した、気迫に満ちた一冊。