風に立つ
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度――補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑う悟。納得いかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!
APPLE BOOKSのレビュー
ミステリー作家、柚月裕子が新境地を開拓したヒューマンストーリー。南部鉄器の職人である父、孝雄の工房で働く息子の悟は、家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度である補導委託の引き受けを申し出た父に疑念を抱く。これまで仕事一筋で家庭を顧みなかった父の思いもよらない行動に戸惑うものの、悟は委託された少年、春斗と同じ屋根の下で暮らし始める…。『検事の本懐』『孤狼の血』といった骨太でサスペンスフルな作品で知られる著者が、身近だからこそすれ違う家族という存在の謎を解き明かした会心の家族小説。岩手の盛岡を舞台に、補導委託を引き受けた一家と、心に鬱屈(うっくつ)した思いを抱える少年との交流を通じて、家族のありようを優しいまなざしと温かな筆致で描き出している。ストーリーや伏線の張り方はミステリー作家ならではのもので、その巧緻さは随所にうかがえるが、中でも父、孝雄の本棚に収まっていたある一冊の存在が印象深い。その意味が明らかにされた時、読者は推理小説の秀逸なトリックが解き明かされたかのようなカタルシスを覚えるはずだ。同時に、人が人を思う機微に触れて涙腺をゆるませるだろう。
カスタマーレビュー
新境地の開拓
柚月裕子さん、新境地を開拓。今まで踏み込んで来なかった分野です。スピード感や疾走感はありませんが、人の生き方を深く考えさせてくれる作品でした。定年を目の前にして改めて自分の人生を振り返り、これからを考える機会になりました。