あわのまにまに【電子版特典付き】
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3.8 • 4件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした?
2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、ある家族たちをとりまく真実。
あの時代、確かにそうやって、わたしたちは生きていた。
隠されていた「わたしたちの秘密」を理解したとき、あなたは平常心でいられるか。
『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞した著者が放つ、生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」を揺らがせる逆クロニクル・サスペンス。
〈全6章〉
1 二〇二九年のごみ屋敷
2 二〇一九年のクルーズ船
3 二〇〇九年のロシアンルーレット
4 一九九九年の海の家
5 一九八九年のお葬式
6 一九七九年の子どもたち
【電子版特典】
著者書き下ろしエッセイ「流れゆく時間の中で」
APPLE BOOKSのレビュー
「ここに、一枚の写真がある」という冒頭文の2029年から1979年までを10年刻みでさかのぼる、ある一族の逆クロニクル『あわのまにまに』。発売前から「二度読み必須」と書店員の間で騒がれた“普通じゃない”一族の成り立ちは、まさにスリラー。2029年夏。祖母の紺が遺したゴミ屋敷の片付けに、小学生の木綿(ゆう)も駆り出される。大量のヴィンテージ服や紙焼き写真など故人の過去が染み込んだ“ゴミ”を、母のいのりと一緒に片付ける木綿の心中で、家族への小さな違和感と疑問がポコリポコリと泡のように浮かぶ。家族だからこそ秘密にされた真実は、通奏低音のように次世代の家族に影響を与えていたのだ。さかのぼるたびに明かされる秘密と本音に衝撃が走るが、作者の吉川トリコがあえて描かない10年のまにまにあっただろうことを想像すると、衝撃は悲しみに変わる。当時の恋愛観やジェンダー観に抵抗した痕跡も切ない。時代ごとの価値観や結婚観、女性の生き方の変化が分かりやすく描かれ、時代の流れを実感できる。