一握の砂
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3.7 • 55件の評価
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発行者による作品情報
「ふるさとの 山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山は ありがたきかな」「東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」……誰もが一度は聞いたことのある石川啄木の短歌は、そのほとんどが『一握の砂』に収録されている。出版は、啄木が亡くなる1年前、1910 (明治43)年のことで、東雲堂書店より初版が刊行された。三行分けによる散文的なスタイルの短歌は、多くの若き歌人に影響を与えたと言われ。その中のひとりが宮沢賢治で、『一握の砂』刊行と同時期に短歌創作を始めたとされる。啄木が生前に出版したのは詩集『あこがれ』と歌集『一握の砂』のみで、歌集『悲しき玩具』は、26歳で夭折した2ケ月後に刊行された。
APPLE BOOKSのレビュー
岩手県出身の詩人/歌人である石川啄木による第一歌集。自身を見つめる叙情的な言葉をつづった「我を愛する歌」に始まり、故郷の渋民村(現在の玉山村)や少年時代を過ごした盛岡を回顧する「煙」、職を求めて北海道各地を転々としたころを追想する「忘れがたき人人」など5章からなり、全551首を収録している。有名な「はたらけど はたらけど 猶わが生活楽にならざり ぢつと手を見る」のように、生の実感をストレートに表現した短歌が並び、生後すぐに亡くした息子への哀惜をつづった最後の8首は深い余韻を残す。最も特徴的なのは、原則として一行で表記される短歌において、“三行分かち書き”という斬新な形式を用いたこと。また、口語的な文体で親しみやすく、1910年(明治43年)の刊行時には鮮烈な印象を与えたことだろう。26歳という若さで亡くなった石川啄木の生前に刊行された唯一の歌集でもある。貧しさに苦しみながらも情熱を失わず、生活感のある等身大の思いを表現した数々の名歌は、現代に生きる人にとっても共感をもって受け止められるはずだ。
カスタマーレビュー
読みやすい
古典なのに読みやすい。なんとなく分かるので、ふふっと笑が出たり、悲しいのかな等、感情を共有できるところもある。