在りし日の歌
亡き児文也の霊に捧ぐ
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3.7 • 47件の評価
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発行者による作品情報
フランスの詩人ランボーに憧れ、30歳の若さで夭折した孤高の詩人中原中也の第2詩集。1937(昭和12)年、死の直前に自ら編集・清書し、文芸評論家の小林秀雄に託され、翌年に創元社から刊行された。それは、第1詩集『山羊の歌』刊行以来2年余にわたる難航の末のことだった。中也の死の前年にわずか2歳で亡くなった長男に宛てた「亡き児文也の霊に捧ぐ」の献辞が付せられているように、文也の追悼詩集でもある。「含羞」から始まる「在りし日の歌」42篇と、「ゆきてかえらぬ」から始まる「永訣の秋」16篇の2部構成となっている。この詩集に収められた「ホラホラ、これが僕の骨だ」と語られる『骨』は、日活映画『太陽への脱出』の中で、伊部晴美が曲を付け、石原裕次郎が歌っている。
APPLE BOOKSのレビュー
代表作『山羊の歌』に続く、没後の1938年に刊行された中原中也の詩集。『山羊の歌』に見られた激情や青春の痛みとは異なり、本書ではより抑制され、内省的な詩境が広がっている。中也特有の音調とリズムは、口語と文語の中間に位置する語感を生み出し、詩に独自の浮遊感を与えている。「湖上」では、静謐(せいひつ)な情景描写とともに心象風景の投影が織り込まれ、象徴主義的な手法と日本語の繊細さが高い次元で融合している。「一つのメルヘン」は、わびしさに満ちた無機的な世界観から一転して、鮮やかに花開く夢幻的な一編である。「骨」は、死後の体の行方をどこか無感情に、飄々(ひょうひょう)と語った詩だが、その背景にはひっそりとした空気感が漂い、無常の感覚を呼び起こす。「月夜の浜辺」もまたもの寂しさが胸に迫る作品である。生きる上でのさまざまな感情を、言葉の器に注ぎ込んだ中也の詩は、時代を超えて読む者に静かな余韻を残してやまない。表層的な分かりやすさが求められ、誰もが共感できることに重きが置かれがちな現代においてこそ、うまく言葉にできない心のざわめきを、音楽のようなリズムと言葉ですくい上げた中也の詩は、まさに“感情の詩集”。その重層的な魅力を味わってほしい。
カスタマーレビュー
なんだか好き
何がって言われても分からないけど好き。
ついつい読んでしまう。
ただ、山羊の歌のほうが好き。