乳と卵
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- ¥430
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発行者による作品情報
2008年の第138回芥川賞受賞作! 娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は豊胸手術を受けることに取りつかれている。緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。夏の三日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。日本文学の風景を一夜にして変えてしまった傑作。
APPLE BOOKSのレビュー
デリケートに揺らぐ女性の心と身体を、奔放かつ繊細な筆致で描く第138回芥川龍之介賞受賞作品、川上未映子「乳と卵」。東京で暮らす"わたし"のもとに、大阪に住む姉の巻子とその娘・緑子が訪れ、夏の3日間を過ごす。豊胸手術に執心する巻子と、思春期を迎えて心身共に不安定な緑子。緑子は母と口をきくことを拒否し、コミュニケーション方法は筆談のみ。"わたし"はそんな母娘の関係性に居心地の悪さを覚えながらも、それぞれの心に鬱積した感情に想いをめぐらす。大阪弁をまじえたリズミカルな語り口、読点で長いパラグラフをつなぐ饒舌な文体や感覚的な言語表現により、女性ならではの身体と感情のつながりが鮮やかに描写されていく。樋口一葉の影響を色濃く映した、流れるような言葉の連なりで独特のリズムを生み出すスタイルは、斬新でありながら近現代日本文学への誠実なまなざしも感じさせる。女性の核心に迫り、文学界に新鮮な驚きをもたらした川上未映子の初期作品。