忘れられた巨人
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発行者による作品情報
奇妙な霧に覆われた世界を、アクセルとベアトリスの老夫婦は遠い地で暮らす息子との再会を信じてさまよう。旅するふたりを待つものとは……ブッカー賞作家が満を持して放つ、『わたしを離さないで』以来10年ぶりの新作長篇!
APPLE BOOKSのレビュー
「日の名残り」や「わたしを離さないで」で知られる、日本でもファンの多い日系イギリス人作家、カズオ・イシグロの10年ぶりとなる長編作「忘れられた巨人」。伝説の英雄アーサー王亡き後のブリトン島を舞台にした、アクセルとベアトリスという老夫婦の冒険物語で、社会、国家そして個人の「記憶」をテーマにした作品。島は竜の息がもたらす霧に覆われ、人々は昔の記憶を持たない。そのために顔も名前も忘れてしまった息子に会うため、アクセルとベアトリスは旅に出る。道中勇敢な騎士と少年に出会い、竜退治に参加することになる。竜を退治すれば霧が晴れて、これまで夫婦で分かち合ってきた楽しい思い出を取り戻すことができると喜ぶベアトリスと、何かを思い出すことによって二人の愛が壊れてしまうこともあるかもしれないという不安に駆られるアクセル。記憶を共有することで深まる絆がある一方、忘れないということは憎しみや復讐心が存在し続けることでもある - このことを神秘的に描き忘却の是非を問うた本作は、カズオ・イシグロならではの静謐な語り口が胸に残る一冊。