献灯使
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3.6 • 20件の評価
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- ¥720
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発行者による作品情報
大災厄に見舞われ、外来語も自動車もインターネットもなくなり鎖国状態の日本。老人は百歳を過ぎても健康だが子どもは学校に通う体力もない。義郎は身体が弱い曾孫の無名が心配でならない。無名は「献灯使」として日本から旅立つ運命に。大きな反響を呼んだ表題作のほか、震災後文学の頂点とも言える全5編を収録。
APPLE BOOKSのレビュー
ドイツのベルリンに在住し、日本語とドイツ語で創作を続ける多和田葉子が、現代を生きる人々へ痛烈な問いを投げかける「献灯使」。舞台は、鎖国政策を取り、外来語も自動車もインターネットもなくなった近未来の日本。老人は百歳を過ぎても元気だが、子どもはみな病弱に生まれ、はかない生涯を終える。国土は汚染され、都心からは人が逃げ出し、安全な食物を手に入れることも難しくなっていた。百歳を超えて健脚を誇る義郎は、身体の弱い曾孫の無名(むめい)の身を案じる日々を送っていたが、無名には献灯使として日本を旅立つ運命が待ち構えていた。謎めいた語り口でシュールな世界を描きながら、原発事故の影響など生々しい現実問題を随所に散りばめ、奇妙にリアルな感触を残す傑作ディストピア小説。その鋭い感性に世界が注目し、アメリカでもっとも権威ある文学賞である全米図書賞の翻訳文学部門を受賞した。表題作のほか、詩的でユーモラスな筆致が冴え渡る中短編全5作を収録。