水底フェスタ
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3.8 • 18件の評価
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- ¥640
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発行者による作品情報
自然を切り崩し、ロックフェスを誘致する以外に取柄もない山村。田舎特有の、窒息しそうな閉塞感に苛立つ高校生の広海は、突然村に戻ってきた地元出身の有名モデル・由貴美と出会い、囚われてゆく。ある晩彼女から「村への復讐に協力してほしい」と持ちかけられ、広海は求めに応じるが、実は由貴美には“真の目的”があった。そしてフェスの夜、取り返しのつかない事件が二人を襲う──。新直木賞作家による傑作長篇。息を呑むラストまでページを繰る手が止まらない!
APPLE BOOKSのレビュー
10代の若者たちが抱える切ない心理を繊細な筆致で描くことで定評のある作家、辻村深月による「水底フェスタ」。主人公の男子高校生・広海は、秘めたる思いを抱いて数年ぶりに帰省した女性・織場由貴美との出会いにより、ロックフェスティバルの誘致に湧く地元の深い闇に足を踏み入れていく。不正選挙、相互監視社会、特殊な人間関係など、閉鎖的なコミュニティーに見られる負の側面が生々しく描き出される。地方活性、過疎化などの社会問題を当事者の目線から映し出した臨場感もさることながら、大人たちの理不尽な振る舞いの中でもがきながらも前に進もうとする若者たちのみずみずしい姿も魅力。ストーリーの鍵を握るミステリアスな美しさを持つ由貴美と、彼女に惹かれていく広海の危うげな関係性も物語を盛り上げる。共同体の中に生きる人々の心理や生きざまを深く掘り下げた、著者の観察眼や筆力のすごみを感じる作品。