



風味絶佳
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3.4 • 5件の評価
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- ¥570
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発行者による作品情報
作家生活20周年におくる、恋愛小説の最高傑作
「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」。恋の妙味を描く珠玉の6篇。20年目のマイルストーン的作品集。谷崎賞受賞作
70歳の今も真っ赤なカマロを走らせるグランマは、ガスステイションで働く孫の志郎の、ままならない恋の行方を静かに見つめる。
ときに甘く、ときにほろ苦い、恋と人生の妙味が詰まった小説6粒。
APPLE BOOKSのレビュー
山田詠美は男と女の感情の狭間に熱と肌触りを宿す、どこまでもリアルな恋愛を紡ぎ続けてきた作家だ。そんな彼女の真骨頂と呼ぶべき恋愛短編集。70歳になっても恋に現役の祖母と恋に不器用な孫。真逆のタイプの2人の女の間で揺れ動く男。男の心と体を料理でつなぎ留めようとする女。ガソリンスタンドで働く志郎や、鳶(とび)職の雄太など、男たちがみな肉体労働者として登場するのも本作の意図された特徴だ。体を張ってシンプルに生きる彼らをふとした瞬間に立ち止まらせる観念と、女たちの生々しい感情が絡み合う様は時に甘く、時に残酷。ほっとする日だまりのような慈しみの時間もあれば、背筋がぞくっとするような情念がにじむ行間もある。少しずつ歪(いびつ)なキャラクターたちがつなぐ本作には、一つとして同じ形の愛はない。まさに「風味絶佳(=味が優れているさま)」な極上の山田詠美ワールドを味わい尽くせる6編。彼女の書く小説は読者に恋愛の幻想を抱かせるものではなく、言葉を超えて“感じさせる”ものだと言えるかもしれない。表題作は『シュガー&スパイス ~風味絶佳~』と題して映画化もされた。