女のいない男た‪ち‬

APPLE BOOKSのレビュー

作家・村上春樹が2014年に発表した9年ぶりの短編集「女のいない男たち」。様々な事情で女性に去られてしまった、あるいは去られようとしている男たちをモチーフとした６編の短編小説をまとめた一冊。主人公となるのは年齢も背景も異なるがいずれも孤独な男たちで、どの作品も味わいは違えど濃厚な男女の世界を目前に描き出す。押しては引く波に身をまかせるような不思議な心地よさと、断続的に見せられる情景の美しさが魅力だ。長編小説家として知られる著者は、短編小説を色々な手法、文体あるいはシチュエーションを実験的に試すことができる探求の場と位置づけているという。初期の短編小説を集めた「パン屋再襲撃」と読み比べてみるのも面白いかもしれない。