写真集 カミキリムシと遊ぶ夏のひとと‪き‬

昆虫を題材にした写真集も9冊目になりました。これまで、ハナムグリ、カマキリ、ビロウドツリアブ、キアシドクガ、テントウムシ、ヒゲナガガ、トンボ(2冊)と制作してきましたが、今回の主役はカミキリムシです。
カミキリムシは、一般的には幼虫が樹木の幹の中を食い荒らす害虫とされたり、その成虫も葉を食べたり樹皮をかじったりと、なかなか迷惑なことをしてくれる昆虫です。そんな害虫を題材にするのはいかがなものかという思いもありましたが、そこはあまり偏見を持たず、生態写真でありのままの姿を見ていただくことにしました。また、普段の姿に触れることで、そんなカミキリムシでも、何か魅力というか特色、あるいはそういうものはなくても、種の多様性への理解に多少でも役立つのではないかと思いました。
子どもの頃は、カミキリムシは甲虫の中でも、カブトムシ、クワガタにつぐ3番目に好きな昆虫でした。今はより多くの甲虫に関心が広がっているので、明確な順位付けはできませんが、やはり子どもの頃の印象は強く、いつまでも記憶の中に鮮明に残っています。
遊び相手となると、カブトムシは大きいけれどあまり丈夫ではなく、ちょっと弱ってくるとすぐに元気がなくなってしまう印象があります。クワガタは種にもよりますが、小さい種ほど丈夫で長生きしてくれて飼育するのに適していました。それに対して、カミキリムシは、当時はシロスジカミキリやミヤマカミキリ、ゴマダラカミキリなど、ある程度大きな種が相手でしたが、昼間でも結構活発に動き回ってくれて、糸を結べばブーンと大きな音を立てて飛び回ってくれました。長い期間飼育しようと思ったことはありませんが、夏になると割と容易に捕まえられたので、その度に遊び相手になってもらい、遊び飽きると逃がしてやる、そんなことをしていました。
そんなカミキリムシにも、多くの種がいる、しかも小さな種には色や模様が独特で綺麗なのがいると知ったのは、山に行くようになってからです。夏に高い山に行くとそのアプローチのお花畑で、色とりどりの高山植物とそこにやってくる昆虫に目を引かれるようになりました。しかし、山に登りながら虫の写真を撮り続けることは体力的に難しく、手元にはわずかな数しか写真が残っていません。
今回の写真集では、これまでの昆虫と同じように、神奈川県の横浜近辺の野山や公園で撮影した写真がメインです。もう少し山の方に行けば、あるいは南の方に向かえば、違う種が撮れたのにとも思いますが、それはまた今後の課題にしておきたいと思います。そうは言っても、逆に普段の生活圏の近くに、それでもこれだけのカミキリムシに出会えたということは、率直に言って驚きでもありました。特に花にくる小さなハナカミキリ、それから朽木や木の洞などに隠れていてなかなか姿を表さないサビカミキリなど、こういうのは子どもの頃には気が付くことがありませんでした。
本書を含む9冊の写真集は、そのいずれもが私にとって身近な昆虫ばかりです。カミキリムシに限りませんが、ある昆虫に注目して写真集にまとめてみると、身近なところに同じ仲間の中に知らなかった種がたくさんいることに気づかされます。しかし、見方を変えれば、想像を越えた多くの昆虫たちが、それぞれの魅力的な姿を見せてくれていることの発見でもあり、やはり日々カメラを持って昆虫スナップを続けることも、それなりに意義があることかもしれないと思えてきます。

<目次>
草花や木の葉にやってくるカミキリムシ
コラム1 どこにでも移動できる便利な脚
警告色を纏ったカミキリムシ
コラム2 周りの情報を集める触角と複眼
ひたすら地味にこだわるカミキリムシ
コラム3 食べ物を開拓する強力な顎
ちょっと悪者っぽい感じのカミキリムシ
コラム4 敵を威嚇するキーキー音
カミキリムシの思い出
おわりに
撮影データの概要

<著者紹介>
Mushiqubo(ペンネーム)、横浜市在住。

<著者のウェブサイト>
2000年からネイチャーフォトを中心に日々の散策で撮影した写真を自身のウェブサイトに掲載してきました。2011年からは現在のウェブサイト「Mushiqubo’s Photo Gallery」で、ブログ風に短い文章を添えて日々写した写真を発表しています。
Mushiqubo’s Photo Gallery (Mushiqubo Page): https://mushiqubo.jimdofree.com/
2020年4月には、『「花ときどき虫」または「虫ときどき花」』をテーマに、花や昆虫の写真を紹介するInstagramを始めました。スマホでは撮れないような写真を、なるべく目指すようにしています。
Instagram: https://www.instagram.com/mushiqubo/