写真集 キアシドクガの舞う初夏の里山
Publisher Description
今回の写真集の主役は、キアシドクガという白い蛾(ガ)です。しかも、ドクガ(毒蛾)と聞くと、警戒する人が多いと思いますが、このガは、成虫も幼虫も毒を持っていません。それとおもしろい習性を持っていて、初夏のいっときに大量に発生し、樹上の高いところをヒラヒラ舞うように群れをなして飛び回ります。それも晴れた午前中が最も多く、明らかに昼行性のようです。その姿は、神秘的とか幻想的などと言われていて、愛好家の間では有名な昆虫です。
キアシドクガという名前とは裏腹に魅力的な昆虫なのですが、残念なことに一般にはあまり知られていません。たまたま3年前の春に出会ってから、毎年この季節が来るのを楽しみにしてきました。あまり地面の近くまで降りてくることがなく、写真を撮る機会を得にくいのですが、天気や気温に注意してフィールドに出かけると、カメラに収めることができます。それを3年続けて、ある程度の枚数が撮れたので、写真集として構成してみました。これまでと同じように昆虫の生態写真なので、自然の中でありのままの姿を撮るようにしています。
昆虫の中でもガと言われると、嫌われ者の筆頭に挙げられます。私も一部のガは別にして、あまり親しめない種がたくさんいます。実はこのキアシドクガも、何も予備知識なしで出会えば、すぐにその場を立ち去っていたことでしょう。しかし、名前を調べ、毒がないことを確認し、その習性を知ると、俄然興味が湧いてきます。
今回の写真集では、そういったキアシドクガの魅力を、なるべく多くの方にお伝えしたいと思っています。しかしその中で、幼虫(要するに毛虫)の扱いをどうするかが大きな問題でした。載せないという手もありますが、成虫だけというのでは魅力の一面を伝えているのに過ぎず、やはり少しで良いから幼虫の姿も入れようと思いました。ただし、見たくない、見れない、という方をどうするか。そのための工夫を本書では取り入れています。
成虫といえどもいきなり写真が出てくるのではなく、最初はイラストでキアシドクガの紹介を兼ねて説明をしています。ここを読んでいただき、だいたいどんな昆虫なのかわかっていただいたうえで、本文の写真をご覧いただくようにしました。また、幼虫や蛹になる前後の写真が出てくるのは、最後の方の4ページ分だけなので、その前のページに幼虫が出てくるということを知らせるイラストを表示してあります。詳しい説明は、本書の目次の下に記してあります。これを目安に、幼虫のページをパスしたり、目を細めて見たり、覚悟を決めて見たり、そういう選択ができるようにしてあります。
このような形でなら、ガといえども目を向けていただけるのではないかと思います。少しでも多くの方に、キアシドクガの魅力がお伝えできることを願っています。
<目次>
はじめに
キアシドクガとは?
第1章 キアシドクガのいるところ
第2章 活動を始めたキアシドクガ
第3章 懸命に生きるキアシドクガ
第4章 命をつなぐキアシドクガ
おわりに
撮影データ
<著者紹介>
Mushiqubo(ペンネーム)、横浜市在住。
<著者のウェブサイト>
2000年からネイチャーフォトを中心に日々の散策で撮影した写真を自身のウェブサイトに掲載してきました。2011年からは現在のウェブサイト「Mushiqubo’s Photo Gallery」で、ブログ風に短い文章を添えて日々写した写真を発表しています。
Mushiqubo’s Photo Gallery (Mushiqubo Page): https://mushiqubo.jimdofree.com/
2020年4月には、『「花ときどき虫」または「虫ときどき花」』をテーマに、花や昆虫の写真を紹介するInstagramを始めました。スマホでは撮れないような写真を、なるべく目指すようにしています。
Instagram: https://www.instagram.com/mushiqubo/