中国怪奇小説集
子不語
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3.8 • 23件の評価
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発行者による作品情報
この作品の作家、岡本綺堂(おかもときどう、1872年11月15日(明治5年10月15日)-1939年(昭和14年)3月1日) は、小説家、劇作家。『中国怪奇小説集(16 子不語(清))』は底本の「中国怪奇小説集」では「小説. 物語」としてまとめられている。
APPLE BOOKSのレビュー
怪談といえば、この世を恨む幽霊がおどろおどろしく現れるもの。日本の感覚で『中国怪奇小説集』を読むと、怪談なのに怖くないと感じるだろう。妖怪は突然現れスッと消えるだけ。ひょうひょうとした語り口もあって、狐につままれたような不思議な感覚が味わえるファンタジーなのだ。本作は、歌舞伎の人気怪談『番町皿屋敷』など多くの戯曲を手掛け、日本における探偵小説の先駆け『半七捕物帳』で人気を博した岡本綺堂が、3世紀初めから6世紀末まで栄えた六朝時代に庶民の間で伝えられた怪談の名作を収集し、訳したもの。川で溺死した魂が次の犠牲者を探すのっぺらぼうの水鬼や、子どもの命を狙う怪鳥など、日本でも聞いたことのあるようなオーソドックスな怪談もある。画工が亡くなった男性の肖像画を描いていたところ、死骸が逃げる人を追って噛みつく走屍(そうし)に変身する笑い話や、万里の長城の工事を恐れる怪物の毛人など、コントのような怪談もありバラエティ豊か。リアルな恐怖は感じさせないが、軽妙さが逆に不気味さと不可解さを増幅させている。1、2ページで完結する短編も多く、気軽に読めるのもいい。