桜の樹の下には
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4.0 • 483件の評価
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発行者による作品情報
「桜の樹の下には」は大正から昭和時代の作家、梶井基次郎の短編小説。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」。桜の花の美しさは、人間も含めた動物の死によってなりたっているのだと“俺”は考える。死によってこそ、美しさが信じられる。死に考えを巡らせることに喜びを感じる。梶井の悪鬼の憂鬱は、美しさの底を暴いてみせる。暴かれた桜は一段と美しく咲くしかあるまい。
APPLE BOOKSのレビュー
1928年(昭和3年)12月刊行の季刊誌『詩と詩論』に掲載された梶井基次郎の幻想的な短編小説で、強い感情が詩的に表現された散文詩とも見なされる。掌編と言っていい短さだが、「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」という冒頭の一文が放つイメージは今なお鮮烈であり、後世の文学、映画、マンガなどに大きな影響を与えた。語り手の「俺」は、らんまんと咲き乱れる桜の美しさに不安と憂鬱(ゆううつ)を感じると「お前」に語りかける。そして、桜の樹の下には動物や人間の屍体が埋まり、その腐乱した水晶のような液を毛根が吸っているからこそ、桜の花々は異様に美しいと確信する。さらに渓谷で何万匹もの薄羽かげろうの産卵と死に遭遇した「俺」は、剃刀(かみそり)の刃を思い浮かべて惨劇への期待とともに残忍な喜びを味わう。美と醜、生と死の平衡感覚。どんなに汚らしくとも美しい誕生につながる死。肺結核を患い、常に死の影を意識しながら生きた梶井基次郎が、転地療養で伊豆湯ヶ島に長期滞在した際に眺めた自然風景から構想された本作は、その死生観や美意識が色濃く反映されている。『檸檬』と並ぶ梶井文学の代表作。
カスタマーレビュー
Beautiful
Just beautiful
キレイな文
桜の木の下には死体が埋まっている、というワードは、何度も目にしたこともあるし聞いたこともある。しかし、その元となった話は初めて読んだので、一つ物知りになった気分。
桜がキレイすぎて怖いという感情は、日本人ならみんな持っている感情なのか。自分も以前、夜桜を見たとき、暗闇に浮かぶキレイな桜に同じような気持ちになった覚えがあるので、興味深く感じた。
これがあの
有名なフレーズの小説ということに惹かれ読んでみた。この作家の美しさについての考え方がかなり好きかもしれない。