漂砂のうたう
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3.9 • 13件の評価
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- ¥640
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発行者による作品情報
【第144回直木賞受賞作】御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊郭の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分の行く先が見えず、空虚な中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。
APPLE BOOKSのレビュー
第144回(2010年下半期)直木賞受賞作。明治から昭和にかけて、時代に翻弄されながら遊郭という谷底の一角で生きる人々の姿をリアルに描く。舞台となるのは、都市化の波で消えゆくことになる根津遊郭。主人公はそこで立番をしている元武士の定九郎。身分制度の撤廃によって落ちぶれ、夢も希望もなく斜に構えて日々を生きる姿は、鬱屈して無気力に陥った現代の若者にも通じる。一方で、遊郭に生きる妓夫太郎や遣手、花魁はそれぞれにたくましく力強い。はなし家の弟子であるポン太や、賭場の山公などもアクセントととなり、登場人物それぞれの人生が描かれた群像劇ともいえる。遊郭の仕組みや賭場、はなし家など、よく知られていない世界についても丁寧に説明しながら、テンポの良い描写で人物像を浮き彫りにしていき、いつしか引き込まれていく。表題の「漂砂」とは、潮流でうごめく土砂のこと。水面からは見えないが、水底で絶えず動いている砂があるように、明治維新後の戦争や近代化、天変地異など激動する時代の中にあって、水底で生きる漂砂のような人々の人生を、鋭く深く切り取っている。
カスタマーレビュー
sk-attack
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傑作
どこなの書評で読んで、読み始めたら傑作でした。木内昇さんの作品はこの作品から読み始めたのですが、とても魅力的です。