罪名、一万年愛す
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4.8 • 4件の評価
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- ¥2,000
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発行者による作品情報
横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。
APPLE BOOKSのレビュー
芥川賞作家という枠を超え、純文学からスパイ小説までボーダレスに物語を紡ぎ出す吉田修一のミステリー作品。横浜の私立探偵、遠刈田蘭平の元に、ある日九州の富豪一族の3代目を名乗る青年が現れる。梅田豊大というその青年は認知症を疑われる祖父、壮吾が夜な夜な探し回る、「一万年愛す」という名を持つ25カラットを超える宝石(ルビー)の捜索を依頼する。遠刈田はその宝石について調べるため、長崎のプライベートアイランドに暮らす壮吾の米寿祝いに参加することに。その場に招かれたのは、豊大をはじめとする梅田一族と、かつて壮吾の関与が疑われた失踪事件で捜査官を務め、現在は隠居の身である坂巻。ところがその祝いの夜、突如壮吾が姿を消す。嵐が近づく孤島という、クローズドサークルものの定番ともいえるシチュエーション。そこに富豪一族と謎の宝、過去の事件の関係者という要素が加わり、いかにも殺人事件が起こりそうな状況で起きた失踪事件。「一万年愛す」、そして45年前の事件との関わりは。 相続争いもなく、動機のある人物も見当たらないという状況の中、どこかのんきに進む壮吾の捜索。やがて白日の下にさらされる、悲しいまでに切実な愛の姿が胸を打つ。