赤頭巾ちゃん気をつけて 改版
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3.7 • 7件の評価
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発行者による作品情報
柔軟な少年の語り口を通じて描かれた、さまよえる若い魂の行方。機知とユーモアにあふれた青春文学の永遠の名作。「四半世紀たってのあとがき」を付す。
APPLE BOOKSのレビュー
第61回(1969年上半期)芥川賞受賞作。東大紛争により東大入試が中止になった1969年の2月を舞台に、高校生「庄司薫」の心情をつづる小説。当時の若者の話し言葉を借りた文体が画期的で、社会現象と呼べるベストセラーとなり映画化もされた。日比谷高校3年生の薫は、ついていなかった。東大入試が中止になり、愛犬のドンが死に、使い込んだ万年筆を落とし、左足親指の生爪がはがれた。東大法学部を志願していた薫は大学へ行くのを辞める決心をし、幼なじみで女友達の由美に伝えようと電話するが、ささいなことでけんかしてしまう。ゲバ棒を振り回す学生に借り物でない考えがあるのかと反発し、お行儀のいい優等生でありながら傲慢(ごうまん)なエリート意識を持つ日比谷高校のいやったらしさに嘆息する薫。若者らしい潔癖さで、みんなを幸福にするにはどうしたらよいかを考え、大学に見切りをつけて新しい知性のあり方を求める姿は、時代は違えど若い読者の共感を呼ぶだろう。痛む足を引きずって銀座の街をさまよい、出会った小さな女の子に赤頭巾ちゃんの本を選んであげることであふれる喜びの温かさ。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』と並ぶ青春小説の金字塔。