噓つきジェンガ
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3.9 • 14件の評価
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- ¥800
発行者による作品情報
気づいた時には、もう戻れなくなっていた
直木賞受賞作『鍵のない夢を見る』と連なる、
圧巻の辻村ワールド!
大学進学で上京したのに、コロナ禍ですべてが狂った。
孤独感が募るなか、割のよいバイトに誘われる(「2020年のロマンス詐欺」)。
優秀ですんなり合格した長男に比べ苦戦している次男の中学受験。〝特別な事前受験〟があると囁かれた母は(「五年目の受験詐欺」)。
人気漫画原作者・谷嵜レオのオンラインサロンは、オフ会の創作講座が大好評。しかし、主催している紡は、谷嵜に会ったことすらない(「あの人のサロン詐欺」)。
騙す者と騙される者の切実な葛藤と後悔を描く、
スリリングな短篇集。
解説・一穂ミチ
単行本2022年8月文藝春秋刊
文庫版2025年11月文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
直木賞受賞作家、辻村深月による詐欺をテーマにした短編集。コロナ禍の孤独の中でロマンス詐欺の片棒を担ぐ羽目になった大学生を描く「2020年のロマンス詐欺」、志望校の合格を餌に大金を巻き上げられる親子の物語「五年目の受験詐欺」、人気マンガ原作者と身分を偽り、オンラインサロンで支持を集める女性を巡る「あの人のサロン詐欺」。本作に収録された3編には、それぞれ異なる詐欺の被害者と加害者が存在する。共通するのは、だます者とだまされる者のどちらにも弱さがあり、不安があり、そうしなければならなかった心情が丁寧に描かれていることだ。そしてそれ故に、単純な善悪では割り切れない物語になっている点に、作者のフェアなまなざしを感じる。自分のためにはもちろん、相手のためにもつき続ける彼らのうそは、不格好で不安定で、いずれ破綻する運命になる。それがジェンガのように崩れ落ちた時こそ、彼らが本当の自分と向き合わざるを得なくなる時。もしかしたら、訪れるのは“救い”なのかもしれない。