たゆたえども沈まず
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- ¥790
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発行者による作品情報
19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画
商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で
浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの
前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホ
と、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇
跡の出会いが〝世界を変える一枚〟を生んだ。
読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜
持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。
APPLE BOOKSのレビュー
ポスト印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホと、浮世絵を扱う画商としてその名をはせた林忠正の親交を描いた渾身のフィクション。時は19世紀末。世界中の富と文化が集まり、“たゆたえども沈まぬ街”と呼ばれるパリで日本人が闘っているところを見せてやろうと意気込んで渡仏した林は、学校の後輩であった加納重吉をパリで立ち上げた画商「若井・林商会」に呼び寄せる。やがて同業者でフィンセント・ファン・ゴッホの弟であるテオドルス・ファン・ゴッホと知り合った重吉は、まだ誰にも認められない画家でもあったフィンセントの絵を個人的に見せてもらえるほど信頼されていく。当時ヨーロッパで熱狂的な人気を誇った浮世絵に引き寄せられた4人の男たち。期待を裏切られ続け、苦悩と孤独の淵にいるフィンセントが、パリでは異邦人として、故国では“国賊”として扱われている孤高の林と共鳴していく姿が興味深い。ついにフィンセントが一番描きたかったものを形にしたにもかかわらず、起こってしまう悲劇。愛が故の結末に心が揺さぶられる。