アンダーグラウンド
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- ¥1,400
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発行者による作品情報
「それらを通過する前とあととでは、日本人の意識のあり方が大きく違ってしまった」1995年に起きた阪神淡路大震災、そして地下鉄サリン事件。日本の戦後史の転換期を狙い澄ましたかのようなこの二つの悲劇は、地下――「アンダーグラウンド」から突如噴き出した、圧倒的な暴力の裏と表だった。魂の最奥部を見つめ続けてきた作家が、62人の関係者への丹念なインタビューを通じて浮かび上がらせる現代日本の、そして人間の底深い闇。強い祈りをこめた、渾身の書き下ろしノンフィクション。
APPLE BOOKSのレビュー
1995年に発生した地下鉄サリン事件の被害者に作家・村上春樹がインタビューを敢行したノンフィクション「アンダーグラウンド」。鉄道会社職員、自動車ディーラーなど、さまざまなバックグラウンドを持った人々に接触し、現場の生々しい状況のみならず、彼らの感情や行動に肉薄していく。本書で村上が挑んだことは、一般的にイメージされる"被害者像"という枠を超えて、徹底して一人ひとりの人間性を浮き彫りにするという試み。事件とは直接関わりがないかにみえる生い立ちなどのエピソードも丁寧に聞き出して、未曾有の事態に遭遇するまでの経緯を描き出している。当事者であるがどこか実感を持てないという心理状態、憎しみすら超えた加害者に対する感情など、被害者たちの声を通じて見えてくる複雑な気持ちの揺れは、読者の中の固定観念を崩して新しい視点を与えてくれる。その時何が起こったのか、なぜ彼らは恐ろしい凶行に遭ってしまったのか。報道などによって定型化されていない生の情報に触れ、事件について踏み込んで考える上での一助となる作品。