ホテルローヤル
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- ¥550
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発行者による作品情報
【第149回直木賞受賞作】北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く――。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昂揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。
APPLE BOOKSのレビュー
作者、桜木紫乃の故郷である北海道の釧路を思わせる北の湿原に建つラブホテル「ホテルローヤル」を舞台に繰り広げられる、7つの物語を収めた短編集。桜木は本作で第149回直木賞を受賞し、物悲しくも時に滑稽な男と女の物語を紡ぎ続けてきた彼女の代表作となった。廃墟と化したラブホテルで恋人にヌード写真の撮影に誘われる事務員の女(「シャッターチャンス」)や、檀家の老人たちと寝て“お布施”をもらう僧侶の妻(「本日開店」)、心中の結末を予感させる高校教師と女子生徒の出会い(「せんせぇ」)など、それぞれの主人公たちは地方都市の狭い人間関係を象徴するかのように少しずつ繋がり合い、ほの暗い秘密や記憶をリレーしながら切なくもおかしい性愛の世界を物語っていく。ホテルローヤルなる名前は、桜木の父がかつて実際に経営していたラブホテルから取られている。荒んだ場末のホテルのリアルな描写や、ドロドロしているはずの官能シーンをどこか乾いた観察者の視点で切り取る彼女の筆致は、自身の多感な思春期にあけすけな男女の姿を垣間見た経験をベースにしているからかもしれない。2020年には女優・波瑠の主演で実写映画化予定。
カスタマーレビュー
自分の知らない世界が
この本により理性が調整できない人間の欲望、男女の本能の差等静かに考えさせられました。
ここ数年の中でもっとも心を奪われた傑作
とにかく文章が上手い。北海道の片田舎にあるさびれたラブホテルを舞台に、さまざまな男女の声に表れない心の渇き、孤独、悲哀が描かれる。この作品に出会えた事を心から感謝する。
葛藤の悲喜
若い頃は、芥川賞の青臭い、まだ文になりきらない作品が好きで、直木賞は、大衆文学じゃないのと感じていたが、年を重ねて、直木賞の作品の文章の上手さに、引き込まれて最近は読んでいる。人は、色々な生き方が、ドラマになる。感情があるから。