小説 不如帰
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4.1 • 35件の評価
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発行者による作品情報
「小説 不如帰」は明治から昭和時代にかけて活躍した日本の小説家である徳冨蘆花の小説。当時の恋愛観や倫理観、家の制度などは、さすがに咀嚼している。「二人の運命がどうなっていくのか」「気が気でなく」について説明している。この作品は底本の「小説 不如帰」では「小説. 物語」として収録されている。
APPLE BOOKSのレビュー
明治時代を代表する作家の徳冨蘆花が、戦争と結核が招いた若き夫婦の悲劇を描いた作品。陸軍中将の長女として生まれた片岡浪子(かたおか なみこ)は、海軍少尉である川島武男に18歳で嫁ぐことに。継母との折り合いが悪く、つらい幼少期を過ごした浪子にとって、心優しい武男と2人で過ごす新婚生活はまるで夢のような時間に感じられた。しかし、その2人の姿を苦々しく見ていたのが、武男のいとこにあたる千々岩安彦(ちぢわ やすひこ)だ。恵まれない境遇で育った彼は、陸軍での出世のために中将の娘である浪子との結婚を狙っていたが、遠方への出張の間に武男との縁談が決まっていたことに強い恨みを抱く。夫婦の幸せな時間も束の間、武男は長期の航海に出発し、浪子は不治の病であった結核に冒されてしまう。それを復讐(ふくしゅう)の好機と見た千々岩の行動をきっかけに、2人の運命は引き裂かれていく…。國民新聞で連載されていた本作は、日本文学史に残る名せりふの数々を生み、当時の国民的小説となった。度重なる戦争や新旧の価値観がぶつかる激動の時代に、女性の立場からのさまざまな問題提起をエンターテインメントに昇華した、作者の見事な手腕を感じさせる名作だ。