神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)
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4.2 • 26件の評価
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発行者による作品情報
1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
APPLE BOOKSのレビュー
日本を代表する作家、村上春樹が、1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災を契機に人生が大きく変わった人々のエピソードを記した連作短編集。1999年、雑誌で連載された『地震のあとで』に書き下ろしの一編を加え改題した本作。冒頭にはドストエフスキーとゴダールの作品からの引用があり、作品全体のイメージを包み込んでいる。表題作では、とある新興宗教から抜け出した青年が、自分の父親かもしれない男を尾行しながら見失ってしまう。震災とは無関係な話のようだが、宗教を信心する母親が震災ボランティアとして被災地に赴いており、その行いが善なのか偽善なのか、偽善も善なのかと考えさせられる。その他のエピソードも、釧路や茨城、東京、タイなど、被災地から離れているがどこかで間接的に関係があり、距離にかかわらずすべての人が、大なり小なり被災地とつながりがあることに思い至る。信用金庫の地下で“かえるくん”と“みみずくん”が戦う「かえるくん、東京を救う」により、作品全体が現実と幻想の間に存在するかのように不思議な余韻を残す。表題作は2008年にアメリカで映画化され、2025年には日本でも連続ドラマ版を経て、映画『アフター・ザ・クエイク』として実写化。時代や国を超えて今なお共感を呼び起こしている作品だ。
カスタマーレビュー
かえるくんに感謝しています、
先日、能登半島で大きな地震がありました。
幼少期に東日本大震災を東京で経験した私にとっては、2度目に見た津波のシーンと倒壊する家屋や崩れた道路、土砂が崩れた崖、
繰り返す地震の中で、何故助けられなかったのかというやるせない不安な気持ちと、自分の身に起きたらという恐怖の中で、以前読んだこの本を無意識に手に取りました。
地震に直接関わりない立場にいる中、しかしながら繋がりを密接に持つ人を、それぞれの物語は描いています。
村上ワールドの中に、痛切なメッセージを感じました。
人々は時に地震による自然の脅威を感じ、それでもなお立ち上がり、この地震の巣の上で生活を続ける
きっと、村上さんの示す、日本人の儚さに感動する想いも、ここから来ているのだと実感します。
今までの様々な災害で被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。
また、この本を手に取って読んでいただければ、幸いです。
地震の余韻
地震の余韻があったからか、暗いトーンの短編が多いように感じた。
それでも村上ワールドは健在で、面白く読むことができた。
作者の故郷で大きな地震が起き、少なくない影響を与えたのだろう。世の中何が起こるか、わからない。
1995年の小説として
短編集だが、どれも一貫して1995年の「あの地震」を核とした物語である。
どれもとても心に刺さる物語。