邂逅(かいこう)の森
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4.4 • 45件の評価
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- ¥770
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発行者による作品情報
山の民「マタギ」に生まれた青年・松橋富治は、身分違いの恋が災いして秋田の山村を追われ、その波乱の人生がはじまる。何といっても圧倒されるのは、山のヌシ・巨大熊とマタギの壮絶な対決。そして抑えつけられた男女の交情の色濃さ。当時の狩猟文化はもちろんのこと、夜這い、遊郭、炭鉱、男色、不倫など、近代化しつつある大正年間の「裏日本史」としても楽しめる冒険時代小説です。長篇小説ならではの面白さに溢れた、第131回直木賞受賞作!
APPLE BOOKSのレビュー
第131回(2004年上半期)直木賞受賞作。秋田の貧しい小作農に生まれた松橋富治はマタギを生業とし、山野と一体となって獣を狩る喜びを知るが、地主である長蔵の一人娘、文枝と恋に落ちたことから村を追われてしまう。鉱山で働き一人前になった富治は、大鳥鉱山で出会った見習い鉱夫の面倒を見ることになるが…。マタギ集落に生まれた主人公が、一度は捨てたマタギとしての人生を再び歩もうとする、人間と自然の共生を描いた骨太な物語。狩りの描写は臨場感たっぷりで、中でも富治がマタギとしての生涯を懸けて立ち向かう終盤のシーンは圧倒的だ。森閑とした雪山の気配や青い空のすがすがしさ、獣の匂いが感じ取れるような迫力ある筆致には否応なしに引き込まれてしまう。男女間で交わされる肉欲や情念を山言葉を使って生々しく描きつつ、その果てにたどりついた通俗を超えた慈しみの情に心打たれる。獣を狩るマタギだからこそ抱く山の神への敬虔(けいけん)な心は、アーバンベア(都市型ベア)のニュースが相次ぐ昨今、自然に対して人間はどうあるべきかという問いの一つの回答であるように思う。ラストにおける幻想的なシーンも、それゆえに強く胸に響く。
カスタマーレビュー
非日常
僕が読書に期待するのは非日常。一度読んで次、部分読み1ページでも1章読みでもまた秋田の雪山に連れて行ってくれる。相手が羆だから凄惨な場面はあるが読後はいい。登場する夫婦・マタギと羆の思いを何度も想像しても飽きない。