はるか、ブレーメン
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
私を捨てた“お母さん”の走馬灯には、何が映っているのだろう。
人生の思い出をめぐる、謎めいた旅行会社に誘われた16歳の少女のひと夏の物語。
小川遥香、16歳。3歳で母に捨てられた彼女は、育ての親である祖母も亡くし、正真正銘のひとりぼっちだ。そんな彼女が出会ったのが走馬灯を描く旅をアテンドする〈ブレーメン・ツアーズ〉。お調子者の幼馴染、ナンユウととも手伝うことに。認知症を患った老婦人が、息子に絶対に言えなかった秘密。ナンユウの父が秘めていた、早世した息子への思い。様々な思い出を見た彼女は。人の記憶の奥深さを知る。そんな折、顔も覚えていない母から「会いたい」と連絡が来るのだが……。
私たちの仕事は走馬灯の絵を描くことだ。
それは、人生の最後に感じるなつかしさを決めるということでもある。
APPLE BOOKSのレビュー
まるで回り灯籠に映る影のように、人生のさまざまな場面が死に際の脳裏に現れては去っていく「走馬灯」と呼ばれる現象をテーマにした感動ファンタジー。3歳で実母に捨てられ、周防の街で暮らしていた小川遥香は、16歳でたった一人の家族である祖母を亡くし、独りぼっちになってしまう。そんな遥香の下に「ブレーメン・ツアーズ 葛城圭一郎」と書かれた怪しい手書きの封書が届く。そこにはブレーメン・ツアーズは旅行会社であること、そして過去に遥香の家がある住所に住んでいたお客様がかつての住まいからの眺望をリクエストしているので、遥香の家で過ごす許可が欲しいということが書かれていた。さっそく葛城と会うことにした遥香は、80代半ばの認知症患者である村松さんの走馬灯を作る旅への協力を求められる。最初は走馬灯を“つくる”という話に半信半疑だった遥香だが、幼なじみでお調子者のナンユウと一緒に村松さんの記憶をたどる旅に付き合うことで、走馬灯を作ることの意味を知っていく。人生の最後に見たい走馬灯が描けるとしたら何を描き込むか。登場人物たちの思い出と自分の過去が並走しているような、不思議な気分を味わえる一冊。