発行者による作品情報
芥川龍之介の作品の中では「王朝物」と呼ばれるもののひとつで、「今昔物語集」と「宇治捨遺物語」から題材を取っている。顎の下までぶら下がる大きな鼻にコンプレックスを抱く僧侶が、何とか短くしようと悪戦苦闘する様を、心理描写を交えつつをコミカルに描いた作品。見た目を取り繕うことの愚かさ、そして他人の不幸を笑う卑しさを訴えかけている。芥川はそうした人の心の奥底に潜む心理的な揺らぎをこの作品中で「傍観者の利己主義」と呼んでいる。1916(大正5)年に『新思潮』創刊号に発表され、夏目漱石が絶賛し、久米正雄が高く評価したことでも知られる芥川の出世作。1959(昭和34)年に三木のり平主演でテレビドラマ化(日本テレビ)された。
カスタマーレビュー
コンプレックス克服の逆説
コンプレックスとは克服した方がより惨めなものになるという逆説的な真実を最終的に受け取った。
最後に芥川は、なぜ短い鼻の方が笑われるようになったのか色々解釈しているが、肝心なものが欠けている。
鼻が短くなったことで、多くの人は内供が長い鼻を気にしていたことを悟り、より笑うようになったと見るのが1番自然である。
つまり、高僧なのに子供のように表面的な自尊心を持っていることがバレて笑いを誘ったのだ。
芥川はわざと外した解釈を書いて、読者の正しい読解力を引き出そうとしているのだろうか?
いずれにせよコンプレックスとは、内心気にしていてもその素振りも見せない方が、あるいはそれについて自虐ネタを言ったりする方が、より人の尊厳を高めるものだということが分かった。
心の裏側
芥川龍之介の「羅生門」を読んだのは先週だった
映画『羅生門』を観て、どうしても気になってしまったから
短編で読みやすいが内容はとても奥深く人は生きるためは何者にもなれるのだと思ったものです。
「鼻」
どんな本なのかと読み進むとこれまた意外
これも短編で読みやすい
読みやすいが深読みするとどこまでも深い
噺家がやればなかなかの笑い話だけども心の動きがよく分かる
漱石さんお墨付きになるわけだ
今度は芥川龍之介の短編集を読んでみたいです。
現代にこそ、読まれるべき名著。
なにかと容姿を気にする昨今。整形がおかしな事から、ファッションの一部になりつつある現代。
人が自分に与える評価など、頭を悩ますに値しないくらい、無責任で価値の低い事だと気づかない。
自分への自信の無さが、さらに深いところまで自尊心を下げる。
ヒトとして形があるから生きているのだから、どんな形であれ、生きるためにはその形を受け入れ、愛せるようになりたい。