草枕
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3.6 • 315件の評価
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発行者による作品情報
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」の書き出しがつとに名高い、夏目漱石の初期の中編小説。1906(明治39)年に『新小説』に発表され、翌年に春陽堂初の漱石本である『鶉籠』に収録された。30歳の洋画家が山中の温泉宿に宿泊し、やがて宿の娘、那美と知り合う。那美に惹かれた画家は、彼女を描こうとするが、何かが足りない。そして、画家が見つけた「何か」とは……。自然主義や西欧文学の現実主義への批判を込めて、俗塵を離れた心持ちになれる詩こそ真の芸術だという独自の文学観、いわゆる非人情の美学が語られる。『吾輩は猫である』の脱稿からわずか10日後に執筆を開始し、2週間後には完成したと言われる。
APPLE BOOKSのレビュー
文豪、夏目漱石が熊本の小天温泉を訪れた体験を基に描いた明治39年発表の中編小説『草枕』。熊本の美しい自然の中で、主人公が芸術や人生に思いを巡らせる物語だ。30歳になる画工の男は、生きづらい俗世界に疲れ「非人情」を求めて旅に出る。山奥の温泉宿に滞在しながら、雄大な自然や村の人々との交流を通して、さまざまな視点で観察を続けていたある日、宿の女将、那美と出会う。破産した夫と離婚し、実家に戻ってきた彼女は「不人情」な女として村の人々からうわさされていた。しかし男には、彼女が今まで見た女性のうちで最も美しい所作をする人であり、「非人情」を体現しているように見えるのだった。そして彼女の絵を描こうとするが、強く生きる彼女をどうも描けない。満州へと向かう元夫と偶然に再会する那美を見た男は、哀れな表情を浮かべた彼女を見て、この姿こそ絵になると胸中で作品を完成させるのだった。全体を通して起承転結がなく、難解な小説ではあるが、美しい文章とともに夏目漱石の鋭い芸術論を堪能できる珠玉の名作だ。
カスタマーレビュー
良いです
漱石の本が無料で読めるとは有難い。
美術的な小説
さすが漱石である。高校時代に読んだのだが、あまりこの小説の良さは分からなかった。感動した。主人公が絵かきということもあって、視覚的に豊かな小説になっている。風景描写が圧倒的である。
難しい熟語が数多く出てきて、読みにくい部分もあるが、百年以上経っても色あせない小説だ。
漱石はやはりおもしろい
中学以来。当時意味分からずむやみに読んだ。最近、様々な場面で冒頭のセンテンスが出て来るたびに読み直して見ようと思っていた。今回だいぶ腑に落ちた。