ダス・ゲマイネ
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4.1 • 35件の評価
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発行者による作品情報
明治時代の日本の小説家太宰治。『ダス・ゲマイネ』は底本の「太宰治全集2」(筑摩書房)では「文学・評論」としてまとめられている。本書で登場するのは、「一 幻燈」「二 海賊」「三 登龍門」「四」などが収録されている。初出は「文藝春秋」1935(昭和10)年10月。
APPLE BOOKSのレビュー
独自の文学スタイルで日本文学史に数々の名作を残した太宰治が、キャリア初期に発表した短編小説。25歳の大学生である佐野次郎は、ある娼婦に恋をしていた。しかし、娼館に通う金もない次郎は、恋する相手によく似た17歳の女性、菊が働く甘酒屋に足を運ぶ。その店で親しくなったのが、尖ったあごと無精ひげ、特徴的な縮れ毛という異様な風貌を持つ音楽学校の学生、馬場数馬だ。裕福な家庭に育ち、ヴァイオリンケースを持ち歩くが肝心のヴァイオリンを持たず、音楽学校に8年も通い続ける馬場は「一緒に雑誌を作らないか」と次郎を誘う。二人は「Le Pirate(海賊)」という雑誌を作るために、東京美術学校に通う絵描きの佐竹六郎、小説書きの太宰治という男を仲間に引き入れる。そして、全員で雑誌のプランを練るために集まるものの、馬場と太宰の決定的な仲違いによって雑誌の話は白紙に戻ってしまう…。坂口安吾らと共に「無頼派」と呼ばれ、当時の文壇における権威や価値観に反旗を掲げる作品で支持を集めた太宰治。本作でも自分自身をこの上なく嫌味な男として登場させるなど、短編小説ながらそのエッセンスを十分に感じ取れる作品だ。