ヰタ・セクスアリス
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4.0 • 101件の評価
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発行者による作品情報
「ヰタ・セクスアリス」は明治から大正時代にかけて活躍した小説家、評論家、翻訳家である森鷗外の小説。「丁度好いから、一つおれの性欲の歴史を書いて見ようかしらん」。哲学者・金井湛(しずか)の性欲的生活(ヰタ・セクスアリス)の変遷を描いた面白「性」告白小説。
APPLE BOOKSのレビュー
ラテン語で性欲的生活を意味するタイトルを持ち、幼少期から青年期までの主人公の性的体験を淡々とつづった森鴎外による異色の自伝的小説。明治42年7月刊行の文芸雑誌『スバル』に発表されたが、掲載号は1か月後に発売禁止処分を受けた。ドイツ帰りの哲学講師、金井湛(かねいしずか)は、何か人が書かないことを書いてみたいと考えていた。自然派の小説は恋愛をテーマにしているが、一歩進めて人生の出来事はすべて性欲の表出であるとはいえないか。金井は、高等学校を卒業する長男に向けて、自分の性欲の歴史を回想していく。初めて春画を見た6歳から、25歳で結婚するまで、1年ごとにつづられる金井の性生活。学校の寄宿舎で上級生の男子に目を付けられて屋根の上に逃げた話、硬派の古賀と美男の児島と結んで性欲を消失させた三角同盟、出会っては何事もなく離れていく娘たち、遊郭吉原での体験など、書かれた事柄は赤裸々だが、露悪的でもわいせつでもなく、科学的かつ客観的な視点で自身の性欲を解剖してみせる筆致は時にユーモラス。軟派、硬派の定義など、現代とは異なる当時の人々の性意識を伝える記録としても読める。それまでつづられた入れ子構造の回想記への扱いにあっと驚く結末も見事。
カスタマーレビュー
私は好きです。
森鷗外の作品と森鷗外自身も好きです。この作品は彼の性に対する芽生えと考え方が書かれています。けして卑猥なものではなく、真面目に、自分自身に湧き上がる感情と他者が性に傾倒する様など、なぜか?と真剣に向き合っているところが素敵だなと感じます。私自身も物事を深く考えてしまい、たわいのないことに対し、なぜかと疑問を持ってしまうため、共感と親しみを持てました。現実的にこんなに真面目な方にお会いしたことがないため、彼の様な方にお会いし、お話できたら楽しいだろうなと思います。