



山月記
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4.2 • 978件の評価
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発行者による作品情報
明治・昭和時代の日本の小説家である中島敦の作品。詩人として名を成そうと志すも、「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」のせいで切磋琢磨しようとせず、人喰い虎と化してしまった元官吏・李徴。進んで教えを請い、求めて友と交わることの大切さ…。自分の中にある僅かばかりの才能の空費…。努力を嫌う怠惰…。自分自身のことを指摘されているような心持ちに…。名作。
APPLE BOOKSのレビュー
国語の教科書に採用されることも多い、唐代の中国を舞台とした不思議な物語。英才の誉れ高い若者が、官職を辞して詩人を目指すも果たせずに行方不明になる。1年後、若者の友人が虎に襲われかけるが、その虎こそかつての若者の変わり果てた姿だった。清の時代の伝奇小説を集めた『唐人説薈(せつわい)』の中の「人虎伝」を原案にした変身譚だが、虎になった理由や過程についてはオリジナルのストーリーが展開。著者のデビュー作だが、幼いころから中国文学に親しんできた教養の確かさが発揮され、虎になった自分を顧みて詠む漢詩は真に迫る。周囲が皆、自分より劣って見えるという、思春期に陥りがちな万能感と心に宿す野獣性を、臆病な自尊心と尊大な羞恥心の両面から暴く。『捜神記』『聊斎志異(りょうさいしい)』など、中国の神話、怪異譚、怪異文学は古くから日本にもたらされ、作家たちに大きなインスピレーションを与えてきた。現在でも、中国を舞台とした歴史ファンタジーが小説やマンガの題材となっているが、本作は昭和を代表する中華歴史ファンタジーの傑作ともいえる。文豪たちが超能力を駆使して戦う、アクションマンガの主人公と異能のモチーフになったのも本作。一読しておくと、マンガの主人公の抱える葛藤や不安定さへの理解が深まるだろう。
カスタマーレビュー
すごい
人間の業の深さよ
昔、読んだ筈だが
年齢が50を迎えようとしている現在まで思い出すこともなかった。
これは夢を諦めきれずに、かといってまともに行動を起こすこともなく歳を重ねた人間の心情を描いた物語だったんだな。
同じように取り返しのつかない境遇になって、初めて心の底から理解できたよ。
最高です。
中島敦さんの山月記は、アニメ文豪ストレイドックスを見てからすごく興味を持ったもので、やっと読むことができて嬉しいと思ったのと同時に、考えさせられるものだったなとも思いました。